鉄道に乗るとたまに忘れ物ありませんか?
傘がメジャーですね、あとはネクタイやアクセサリーなど。
少し外してそのまま忘れちゃったってことが多いそうです。
それらの保管期間が過ぎ、放出されて「忘れ物市」として販売されるタイミングがあります。
他人の忘れ物を購入するなんて中々不思議な体験じゃないですか?近所で開催していたので行ってきました。
忘れ物でもない支給品のホーマーをゲットしました笑
時計の忘れ物コーナーは存在してたけど、価値のあるものはほとんどなかったですね。
国鉄時代、支給品の時計としてシチズンのホーマーが存在していた。
というのは知っていたものの、タマ数もかなりありますしいつか買おうかなーくらいでした。
現物を見るとだめですね、買ってしまいます。
バイクと一緒。
正確さが必要なことから民間用ホーマーと違い、クロノメーター級まで精度が出るcal091が搭載されてます。
初期ホーマーのcal020がベースですが、秒針規制など機能が追加されたムーブメントだったはずです。
規制機能は普及品でも60年代後半なので当時は珍しい機能でした、秒単位で正確さが求められる現場では必須だったのでしょう。
正統進化した時計ですが、ホーマーの支給は60~70年代まで。
70年から先はクォーツの台頭で機械式にとって代わりましたからね。
おお~この刻印がザ・支給品って感じ!
昭和43年なので1968年ですね、製造年か分かりませんけど。
東鉄は今のJR東京です、現場でツールとして使われていた時計ってのが大変ロマンを感じます
過密ダイヤをこの時計が担っていた・・・。
正確な時計を見て、ホーマーの時刻を調整しているのが思い浮かびます。
使用していた環境なのか、大事に使う職員さんだったのか、年式のわりに大きな傷もなくキレイです。
懐かしいプラ風防は割れもなく磨けば光るでしょう。
ねじで止められた文字盤を外せば、デイトなしのシンプルな地盤。
テンプのパラショックに2番3番の穴石も耐震装置付きで、突然の衝撃にも強い。
ウィークポイントの少ない頑丈そうなムーブメントです。
正確さが必要なことから民間用と違い、調整次第でクロノメーター級が見込めるcal.0911
手巻きなので駆動側もシンプル、シチズンフォントが昔を語ります。
各社、規制レバーは見てきましたが板バネで4番車にブレーキかけるのは初めてみたかも。
リューズを引っ張れば規制レバーが写真下へ向かって動きます。
おしどり、カンヌキ周り。
ツヅミやキチ車の摩耗も少なく大変良い、洗浄してそのまま組み立てです。
ひげぜんまいがご覧のありさま。
寄ってますし、磁気帯びでくっついちゃってます。
洗浄後、磁気抜きして真円になるよう調整!先が細い工具で、どう触ったら丸になるか・・・をイメージしていきます。
真円になっても、水平が傾くとめんどくさいので、時々水平から目視で確認です。
3姿勢で日差±20秒、片振りも0.4msまで追い込めました。
自分で使う分には十分です。
ケースの傷はやすりがけしたあと、角が取れないようにバフ仕上げ。
このホーマーはラグ部分に斜めの面取りがあり、エッジが崩れると安っぽくなるので気が張ります。
プラ風防も磨いていきます。
深い傷でも1000→1500→2000番で水研ぎし、仕上げのプラ磨きでキレイになりますよ。
プラ磨きはなんでもいいですが、仕上げ磨きで有名なサンエーパールを使うとよく仕上がります。
傷は簡単に取れるけど、ケースに圧入するタイミングが怖いんですよね・・・割りそうで・・・。
針が若干曇っていたので、布磨きで仕上げてます。
デイト無しは針の位置合わせも大変楽です笑。
今時のリーズナブルな機械式はプラスチックなスペーサーで合理的ながら少しガッカリ。
これはメタルスペーサー、お金かかってて「良い」
平成飛んで、令和の数字が刻まれました。
およそ50年、生まれてもいない時代に作られた機械だ。
満員電車に人間を詰め込んでいた時も、この時計を着けていたんでしょう。
仕上がりました!
時間を見るという、時計として当たり前の行動に寄り添ってくれる大きなインデックスと
太いドルフィン針が視認性の良さを高めています。
個人的にインデックスにかぶるくらい長い長針が好みなのでちょうどいい時計なんです。
ベゼルが細く、対比的に文字盤が大きく見えるので現行サイズに慣れていても違和感なく着けられますよ。
役目を終えて朽ちるはずだったのに拾われてまた仕事しないといけない哀れなホーマー。
かわいそうに・・・お仕事時計として使ってやるからね!
このホーマー、今回のホワイトとアイスブルーがありました。
忘れ物市でもアイスブルーあったんだけど・・・文字盤がちょっとボロだったのでスルー。
キレイな写真をネットで見るとこっちも良かったなぁ、きれいなのあったらほしいな。
バンドは青みがかったグレーをチョイス。
国鉄みたいに黒バンド!もいいんですが・・・ちょっと固すぎました。
如何にクロノメーター級ムーブメントといえど、クォーツやスマートウォッチを選べる現代において道具としてホーマーを選ぶ理由は全くありません。
が、「つまらない」んですよね。
別に煽っているわけでもなく、クォーツは私も着けています。
しかし腕の中で小さな機械が動いている、小さな歯車とバネが止まることなく動き、それらが時間を表すというのがなんとも言えないロマンなのです。
朝起きたらゼンマイを巻き上げ、時間がずれていたら調整する…この上ない「手間」ですね笑
運のいいことに時間がシビアな職業ではないですし、趣味の世界でも正確な時間なんて要りませんからね。
現行のプレミアムで価格ばかり高い機械式よりも、お値段が手ごろで部品も手に入り
かつ手巻き、シンプルな3針でメンテナンス性も良いホーマーは気軽に楽しめるアンティークです。
時計というあるべき姿を現すかのようなホーマー。
ぜひあなたのコレクションに加えてみてはどうでしょうか。
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